駅にしばらく停車した。
開け放たれた窓から生温い外気が侵入する。


「芸能界を引退してと頼んだら、ユウはそうしてくれる?」


「俺はーー」


「ううん、その答えはいらない」


自分の中に渦巻く嫉妬と、

好きな人を好きだと思える愛情。




捨てたはずの感情が蘇り、

それは他でもないユウのおかげだ。



ユウにはたくさん笑わせてもらった。


海のこと以外で涙も流れるようになった。



「Ryoとユウ、2人の幸せを願う私のように。ユウも海と私の2人の幸せを欲しがって良いんだよ」


芽生えた様々な感情に戸惑いつつも

前を向いて生きていく勇気を。



ユウが教えてくれた。




「お兄さんと海のために、立派な俳優で在り続けてね」



それは心からの言葉だった。



そして私もまた海と慶斗さんの願いを叶えて欲しいと強く思った。