私の嫌味に対して視線で人を制することができるのではないかと思うほど、また睨まれる。
「………なによ?」
「可愛げのない女だな」
「そんな女にキスしたのは誰よ?」
2人しかいない控え室で暴言を吐き合う。
「あんなの挨拶だろう」
「アンタにとってはね!」
そりゃそうだ。
映画やドラマのワンシーンで、ユウのたくさんのキスを見てきた。20歳という年で、爽やかな青春もの、天涯孤独の少年、年上女性に溺れる役など、彼は様々な男の人生を演じているのだ。
そこに私とのキスが加わったくらいで、何も変わらないだろう。
「ネットで噂になってたけど、【BLUE GIRL】のリョウってあのRyoのこと?」
突然の質問。
「え?」
「いや、同じ名前だから。リョウは、歌手のRyoをモデルに書いたのかと思って」
壁にかかった時計の針が時を刻む音が随分と大きく聞こえた。


