BLUE GIRL


カメラが止まり、監督のOKサインが出ると一斉に拍手がわきあがった。


美島さんの姿もあり、笑ってくれていた。

ユウと雪乃さんが握手を交わし、スタッフが花束を抱えて私たちの前に立つ。


「羅依ちゃん、お疲れ様」


監督から花を渡されて肩を叩かれる。



「後はこちらで編集して良い作品に仕上げるから」


「お願いします!」


終わりだという実感はないけれど、周囲の名残惜しい空気を感じとる。


「ユウ!もう遅い時間だし、打ち上げば後日にして、代表して一言お願い!」


監督のフリにユウへ視線が集まる。

分かりやすく嫌な顔をしたユウだったが、
次の瞬間には深々と頭を下げていた。



「今日までありがとうございました。当たり前ですが映画はひとりでは作れず、個の力での限界値をみんなで高め合うことができる。そんな恵まれた環境でリョウを演じられたこと、誇りに思います。ありがとうございました」


内に秘めている役者への情熱。
きっとユウはここにいる誰よりも、映画【BLUE GIRL】に尽力してくれた。


ユウが退散するまで拍手は止まらず、

堂々と胸を張って歩くユウの姿をあと何回、近くで見られるのだろうか。



「言いたいことがあるのなら、行きなさい」


美島さんが私の手から花束をとり、後押ししてくれる。

父とはあまり仲良くない私にとって、美島さんは父親代わりだった。

海とリョウとの3人での京都旅行も二つ返事で了承してくれたけれど。本当はこっそり後をつけて、同じ旅館に泊まってくれていたことも知っている。

我が子だけでなく、私のことも本当の娘のように可愛がってくれた。


「さぁ、行って」


その言葉に頷く。


「それ綺麗だから、お家に飾って」


海、きっと喜ぶよね。