「一度君のお母さんにも会っているしね。美島さんや、お母さん…俺や君は色々な人の力を借りて、【BLUE GIRL】を製作しているんだよ」


お母さんとはしばらく口を利いていない。
未成年の私が映画に出演できるよう、美島さんが母に交渉してくれたけれど、監督と会っていたなんて初耳だ。


「ユウは出演料を全額寄付すると言っているし、Ryoは【BLUE GIRL】の主題歌を無料配信してくれるようだ。それぞれが思うように行動してくれている。残り3日の撮影だけれど、君も悔いの残らないようにね」


「はい…」


立ち上がった監督に頭を下げて、見送る。


ユウもRyoも教えてくれなかった。
話してくれても良かったのに。



「あ、そうだ」


階段を降りる一歩手前で監督は振り返った。



「ラストは変更なしで大丈夫?」


「え?」


「ユウと雪乃のキスシーン」


首を傾ける。
キスシーン?


「それがなにか…」


「複雑な心境なのかな、って思って。2人は付き合ってるんでしょう」



「……」



笑って誤魔化す。


「私が一方的に好きなだけなので、気にしないでください」



本音を口にした。

両思いでなければ恋人でもなく、仮初めの関係は、後3日で幕を閉じる。


3日後、他人に戻るだけだ。