「監督、お話があります」


撮影の間、ずっと考えていた。
このままで良いのかと。


監督の熱意、雪乃さんの真剣な眼差し、ユウの完璧なまでの演技。
スタッフ全員が完璧なのに、私だけが宙ぶらりんの状態で中途半端に立っている気がした。


屋上のベンチに腰掛けた監督の前に立つ。


学生時代にスポーツに励んでいた名残がある。盛り上がる筋肉と大柄な体格のせいで私の座るスペースはなかった。


「私は、監督にいくつかの嘘をついています。そのことで、お話ししたくて」


Ryoにも担当編集の美島さんにも相談していない。これは私の独断だけれど、心は決まっていた。


「それじゃぁ、君が一番話すべきだと思うことをひとつだけ教えてくれ」


監督は電子煙草を加えた。


一番、話したいことーー



「【BLUE GIRL】は私の親友、海の生きた日常を綴った物語です」


「…よく話してくれたね」


ゆっくりと頷いてくれた。


「海さんの父親である美島くんとは古い付き合いでね。【BLUE GIRL】のだいたいの事情を把握している。知った上で、メガホンをとった。ある程度把握した上で、君を理子役に後押ししたんだよ」


監督を凝視する。

生温い突風が屋上を吹き抜けた。