迷わず入ったお店は落ち着いた小料理屋だった。
カウンター席に座ると目の前に何種類もの料理が並んでいた。
「美味しそう」
「好きなの頼めよ」
「えっと、筍の煮物と、ナスのグラタン?と、厚焼き玉子と、海老の天ぷら!あ、焼きおにぎりも!」
私の注文した料理を伝票に書き留める定員さんの顔を見て、ハッとする。
「原田さん?」
「今、お味噌汁も持ってくるからね」
エプロンをつけて料理を取り分ける彼女は、ユウのヘアメイクの原田さんだった。
「どうして…」
「ここうちのお店なの。仕事が終わったら私も手伝っててね。どれも夫の自慢の料理だから食べて」
「はい!」
「素敵な日に、うちを選んでくれてありがとう。羅依ちゃん、おめでとうね」
「ありがとうございます!」
たまたま入ったお店ではなく原田さんのお店であり、貸し切りにしてくれていたことを知った。


