クリーム色の涼しげなワンピースと、オレンジ色のサンダルを履き、美容院で髪型をセットしてもらった。
待ち合わせ場所は夜8時、居酒屋が立ち並ぶ古びた商店街の片隅にユウがいた。
お洒落とは程遠いネオンが輝く街であったけれど、背伸びが必要のない場所だ。
「ごめん、待ったかな」
「服装、違うな」
開口一番、黒縁眼鏡のユウは言った。
「誕生日だからお洒落してきたの」
「似合ってる」
「あ、ありがとう」
素直に受け入れられて嬉しい。
ユウはストライプの半袖のYシャツにゆるりとネクタイを巻き、黒いパンツを履いていた。
今日は黒髪のままで、無造作ヘアーだ。
「行こうか」
「うん!お腹空いた!」
誕生日の夜。
楽しい時間は永遠に続かないと知っているから、今を大切に生きることの尊さを海が教えてくれたから。
今夜だけは、幸せに浸りたい。


