「もうそこだから。送ってくれてありがとう」
「…あのさ、」
珍しくユウは口ごもり、目を逸らして空を見上げた。
「昨日は悪かったな」
「悪かったって…」
パンツのポケットから手を出して、ユウは首を垂れた。
「反省してます」
性格は悪いけれど、その真髄は優しさでできていて。
態度は悪いけれど、紳士的な一面もあって。
こうして住宅街の真ん中で私なんかにトップ俳優がプライドを捨てて頭を下げている。
「それを言うために、送ってくれたの」
「明日は安心して来て欲しくて」
「…昨日はビックリして抵抗できなかったけれど、次は突き飛ばすから!だから平気!」
「そうか」
ふっと笑った穏やかな笑顔に心が落ち着く。
「…ねぇ、やっぱりレストランはやめます。普通の居酒屋で十分です」
「そうか」
後1週間。
ユウの隣りに居られる僅かな時間を、笑顔で過ごそうと決めた。


