キミだけが知らない想い

「何泣いてんの?」と優斗が私の顔を覗き込んできた。

「だって…」私はうまく言葉にならなかった。

少しして、落ち着いた私は練習を再開させた。

優斗は5本勝負にも付き合ってくれた。

うん。今のは完璧だったと思うほどの力を発揮し、私は優斗に勝った。

頭を優しくポンポンしてくれた優斗は「次は絶対負けないから!」と強く私に宣言した。

その後は、普通にミニゲームやら何やらをして、部活を終えた。

皆が帰る中、私はまだボールを持ったまま突っ立っていた。

まだやりたかった。ヒロに負けたことが悔しすぎたから?それとも納得のいくものでは無かったから?

それはわからなかった。

けど、そんな私の気持ちを汲み取れるほど、ヒロは出来ていない。

笑顔で「センパーイ帰りましょ?」って言ってくる。

この笑顔は可愛いし、ズルいとは思うけど!

今はその笑顔が胸に突き刺さって痛い。

私はヒロと目を合わせられなかった。

「もう少しだけ…練習して帰るわ」と私が言うと、

「…えっ?じゃあ、俺も付き合いますね!」とヒロ。

「いい。一緒に練習しなくていいから!」私は語尾を強めてそう言ってしまった。

「どうしたんですか?」とヒロが言う。

「俺が付き合うよ!」と言ってくれたのは、あっ君だった。

あっ君が「俺が送るから、今日はもう帰ってあげて?」と優しくヒロに言う。

大好きなあっ君に言われて頷くヒロ。

「話なら俺が聞いてやるから!篤人はこないだのこともあるから信用ならん!」と優斗は割り込んできて、

「何やねん!それ!酷い!」とあっ君は言って口を尖らせる。

そんなあっ君につい、笑ってしまう私。

「山ほど言いたいことはあるんだろう?ヒロにじゃなくて俺に」と優斗が言うので、私は頷いてしまった。

「俺じゃ頼りにならないってこと?」とヒロが言ってくる。

そうじゃないわ。でも…改めてやっとヒロの恋人になれたんだと思うと、ヒロに飛ぶ黄色い歓声に腹立ったり、ヒロを前にすると動揺して自分らしくプレイ出来なかったりって自分が悔しくてならない。

悔しくて、苦しくて涙が止まらなかったりして…そんな姿、見せるのはカッコ悪くて、見られたくない。

ただそれだけなんだけど、本人を前にそんな恥ずかしいことも言えるはずもなく…

私はただ唇を噛みしめた。

「バカかよ!お前なぁ。恋人には見せたくないもの、見られたくないことくらいあるんだよ。察してやれ。プライドだってある」と優斗は言ってくれる。

「そーだよ!ヒロ。俺だって、ほんとのところ、美穂と仲良くしてるところ、俺からしたらコミュニケーションのつもりだけど恋人からしたら、他のやつとイチャついてるように見えるとかで、よく澪華怒ってるから、気持ちはわかるけど、もう少し理解しようとしてやってくれ。先輩としてのプライドとかもあるだろうしな」とあっ君はフォローしてくれた。

「わかりました。そうですよね…」と言いながらも少しシュンとしているヒロは可愛いんだけど…

私は何も言えなかった。

そして、「じゃあ、兄ちゃん、美穂さんのこと頼みますね?」と言い残してヒロは去っていった。

「こーゆうときくらいは強情に俺が送る!って言っても良いのにな。ほんとに…控えめだよなぁ。こないだのアレが嘘みたいじゃん」と優斗は言った。

私は頷いた。

そう、控えめ過ぎるのがたまに仇のようなな気がする。

もっと求めて欲しいし、少しぐらい強引に俺のだとアピールしてくれてもいいのに。

そう思うけど、、ヒロには多分伝わらない。