翌日、優斗はいつものように私のお迎えに来てくれた。

今日は弘夢は一緒じゃないらしい。

「もしかして、昨日揉めたりした?」と私が聞くと、

「まぁ、揉めたと言うかなんと言うか、重い空気は流れてたよな」と優斗は笑った。

そっかとしか言いようが無かった。

「それより、アイツ絶対今日絞めるからな?」と優斗はSっ気全開の笑みを浮かべた。

学校につくと、私たちが並んで歩いてるところに、声をかけてきたのは、あっ君と澪華ちゃん。

「昨日はごめんね~私のせいで」と謝ってくれた澪華ちゃん。

「本気で悪かった」と全力で頭を下げるあっ君。

周りの視線がこちらに向けられる。

私は顔をあげてとは言えない。だって優斗の殺気だった黒いオーラを感じるから。

優斗は胸ぐらを掴み顔を強引にあげさした。

そして、キス出来そうなほど近い距離で、私には聞こえないようにあっ君に何かを言った。

あっ君の顔が一気に青ざめた。私と澪華ちゃんは生唾を呑みこみ、見守ることしか出来なかった。

そこに現れた弘夢が。

「センパイ?おはようございます。って、兄ちゃん何やってんの?ほら、早く勝島センパイ離してください!」と何故かあっ君を庇い、優斗から引き離した。

「あ?何なんだよ。人の彼女泣かしといて見逃してやれってか?」と優斗が言う。

私はその公共の場での発言にうつむくしか出来ない。

「場所、よく考えなっていってんの!ここ、学校の入り口。邪魔だし、迷惑!」と弘夢は言い残すと、校舎の方へと歩き出した。

そこで、優斗はあっ君から手を離した。そして4人で歩き始めた。

険悪な空気が流れているのかと思いきや、

「力強すぎやねん。マジ殺されるか思たわ」とあっ君が言った。

「ワリィ。これで、周りは美穂が俺の彼女やと思たやろ?まさか、ヒロが止めに入ってくるとは思わんかったけどな」と優斗は笑った。

絞めると言っていたが、どうやら大丈夫そうと言うより、二人のなかでは完結してるような感じだった。

私は怖くて聞けなかったけど、

「…わざと??」と澪華ちゃんは聞いてしまった。

「まぁな。俺が置いて帰ったのが悪かったわけだし。怖い思いさせたのは、俺も、篤人もお互い様なわけよ。カッコつけすぎだしな。だから周りに一応騒がれるようにひと芝居打ったの。本気で絞めるわけは無いじゃん?ウチのエース怪我でもさしたら、キャプテンに半殺しにされるわ俺」と優斗は言った。

良かった。とりあえず。

「やっぱり彼氏めんどくせぇ。早くアイツ行動起こしてくんねぇかな」と優斗はぼやく。

「…酷い言い方ね。そんなんだったらほんとの彼女出来たとき大変ね。すぐに別れるはめになるわよ」と澪華ちゃんは言った。

「だってじれったいだろ?両想いのくせして。さっさと引っ付けよ思うじゃん。アイツもヘタレじゃあるまいし。本気で好きならさっさと行動起こしてくれよな」と優斗が言う。

「…もしかして、優斗…好きなひと出来たの?」とあっ君は優斗に近づいた。

「ちけぇんだよ。これだから困る。殴りたくても殴れねぇ。人気者のダチに持つと苦労すんな」と優斗は言って笑った。

そうこう話してるうちに昇降口に着き、私たちは靴を履き替え教室に向かった。

授業はいつも通り始まった。

あっ君は相変わらず、真面目で私はついついあっ君を目でおってしまう。

私のそんな目線に気づいたのか、あっ君はにっこり笑う。

ズルい。私はホントにこの顔に弱い。

私は思わず顔をそらしてうつむく。