一瞬驚いた私だったけど、すぐに冷静になった。

ふっ、凡人どもが最後の悪あがきなんてやらせておけばいいのよ。

私は席につき、パラパラっと教科書に目を通すフリをしながら周りの会話に意識を集中させた。

「ねぇ、この問5の証明だけど…」
「sinθを求めるには、この公式を使うんだよね?」
「今回は応用が3割でるらしいね。」
「過去問三年分はやったからまあまあ自信あり。」

会話の中に出てくる、単語、公式…。私が聞き覚えのない言葉。

なんだこれ。なんだこれ。

どんどん鼓動が早くなって、私はトイレに駆け込んだ。

何かが違う。

顔を洗っても洗っても、鏡に映る私の顔には

焦りの色が隠せなかった。