西野に連れられた浩太は、生徒指導室へと通された。

「先生、話って…」

「大丈夫。あなたが悪いことをしたとか、そういうのじゃないから」

「では、何ですか?」

西野は少しお腹をさすって、柔らかな笑みを浮かべた。

「いるらしいの。赤ちゃん」

浩太は戸惑い、

「おめでとうございます」

と言うのが精一杯だった。

「それで、みんなに報告しようかどうか、迷っているの」

「そんなの、教えてあげればいいじゃないですか」

「そうだよね。でも、あの事件を思い出してしまうから」

西野の言葉に、浩太は何も言えなかった。

なぜなら、どうしてそれだけ恐怖し、迷うかと言うことが、よくわかったからである。