馬鹿だと思った。
死ぬつもりなら、そんなこと気にもしないでさっさと死んでしまえばいいのに、今さらどうして声の主を探さなければいけないのか分からなかった。

それでも、
振り返って右や左と真っ暗な砂浜を見渡す。
月明かりもない場所で、波の音だけを耳にしながら声の主をいつの間にか必死になって探した。


ひどく滑稽だと思った。


ついにあたしは声をあげた。

「誰なの!どこにいるの!」












目を凝らした視線の先に、見えてきたのは紛れもなく人影で、こちらに向かって歩いてくる。

恐いとは思わなかったし、何故か期待に満ち溢れるような、待ち望んでいたかのような、そんな感覚だった。



「もし、邪魔したならごめん。
誰なのって聞かれたから来たけど。」