「いいよ」


あたしがそう言うと、その人はホッとしたように見えた。




「あ、じゃあ自己紹介。
俺は杉澤 孝太です。」



そう言って手を差し出してくるから、



「あ...
鳴海 由姫、です。」



あたしも手を出して握手した。




「由姫ちゃんね!
寒い!帰ろ!」



早口で捲し立てた彼は握手したまま、あたしの手を引いて走り出した。


あまりに突然で、肩に掛けただけのコートが落っこちそうになるから、必死に片手で掴んで走った。






ハァハァと荒い息を上げたあたしたちは彼の車の前にいた。




「乗って!すぐ暖房つけるから!」



言われるがまま、あたしは助手席へ乗り込む。


死ぬつもりだったあたしは何も怖くない。

好きにすれば良い、そう思っていた。





「寒かったー。大丈夫?」





急に顔を覗きんでくるから心底びっくりした。