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「ねぇ、また見つかったらしいよ」


「え、また?災いが起こるわね...」


「さっさと始末して海に流してもらわないと」


「本当ね。」








下駄の音が響くこの下町で、そんな噂話が上がっていた。


この下町で過去に何度か起きたその事件は、村人たちの間では有名だった。



「名前は何といったかな?あ、そうそう、浦方さんだったかな」


「浦方さん、まだ半端な青年なのよ。
騙されちゃったのねぇ」


「かわいそうに。一生牢獄よ。」





漁師の浦方 幸親(うらかた ゆきちか)。

歳は19になる青年。
父から受け継いだ漁場を、一人で切り盛りしていた。

両親が亡くなったのは16のとき。
それ以降は一人きりだった。


彼がよく出かける海には、出会ったその人間とその者の住む村の人間全てに災いをもらたすと言い伝えのある恐ろしいアルモノが存在する。


人々はそれを恐れ、そのアルモノに目をつけられた人間には厳しい罰を下し、またそのアルモノは捕らえられ命をとられる。
そして海に沈めた。



幸親はその噂は知っていったし、父からも再三注意を受けていた。

決して、あの場所へは行くなと。






しかし、一人になってしまった若い青年は命を繋ぐため、とうとうその場所へと船を運んでしまう。


恐れられていたその場所では、よく魚が獲れた。
とても活きの良い見た目鮮やかな魚ばかりだった。


漁の腕を認められるばかりか、若い青年には十分すぎるほどの金を手に出来た。



幸親は何度もあの場所へと船を向かわせた。





そんな頃だった。




いつものようにあの場所へ向かった幸親は、今日も大量だ、と網を引き上げていた。


すると、大きな尾びれのようなものが一瞬跳ねた。


おや?こんな大物は初めて見た!


幸親は網を引き上げるのをやめて、静かに海を見つめた。



シンと静まり返った海。

見渡せど見渡せど、さっきの魚は姿を現さない。




「どこへ行った?」




幸親は呼び掛けてしまう。











パシャン



幸親の見ていた方向とは真逆の方で水音がした。



慌てて後ろを振り返った幸親は、我が目を疑った。




まさか..................