先輩、好きです。


そんな呑気なことを言っている私もかなり足にきていたが、まだここでは終われない。


「自主練するの?」


ボトルのスポーツドリンクをなんとも色っぽくのんだ梓は、そう私に尋ねた。


「もちのろんさ!体力を上げなきゃね!」


夕食までの2時間半、大半の部員は地獄のメニューでの疲れを少しでもとるため自室へ帰って行くが、この時間は自主練をしてもいい時間になっている。


「ふーん。ほんと、やる気だけは尽きないわね」


「まーねー」


私はそういうと立ち上がり、自室へ帰って行く部員が多いなか、トラックの人気のない方へ歩き出した。


「じゃあね、部屋で待ってるから」


「うん!」


梓に手を振り返して、歩くペースを早める。


頭の中でどんなメニューにしようか考えながら歩く。


「やっぱり距離走んないとかな」


目的の場所まで来ると、ボトルを近くに置いてウィンドブレーカーのポケットに入れていた音楽プレイヤーを取り出す。


普段に練習では怒られてしまうが、自主練の時は音楽を聴きながら行うのが私の習慣だ。