七月七日の前日。
部屋が揺れるような音に、私は目を覚ました。
ドドドド、という滝がこの建物を押しつぶそうとしているかのような、そんな轟に私は慌てて飛び起き、部屋を出た。
「……な、なんてことなの……?」
「織姫さま、そちらは水浸しにございます。どうかこちらへ!」
そう言って女中は私を広間へと連れていこうとするけれど、私は呆然と立ち尽くしていた。
縁側から見える外の景色、そこにはバケツをひっくり返したような大雨が窓の外の景色を塗りつぶしていた。
「こんな雨では、彦星さまは来れないじゃない」
「大丈夫にございます、姫さま。これは洗車雨でございます。彦星さまが明日姫さまに会う為の準備雨にございますゆえ……」
「この雨が? こんなに酷い雨が?」
「左様でございます」
七夕の前日、彦星さまが牛車を洗うため、雨が降る。それを洗車雨という事は私だって知っている。
けれど……これは違うでしょう? そもそも牛車を洗うのに、こんなにも雨が降るものではないわ。
縁側は水浸しで、今も女中達が床を拭いて、縁側に戸を立てている。これが洗車雨ですって?
「……彦星さまはきっと、今年も私に会う気がないのだわ」
「姫様……そのような事はございませんよ」
「いいえ、あるわ」
私は女中をその場に残し、足早に棚機部屋へと向かう。
後ろからついて来ようとする女中には去るよう言い放ち、私はひとり部屋の中に閉じこもった。
部屋が揺れるような音に、私は目を覚ました。
ドドドド、という滝がこの建物を押しつぶそうとしているかのような、そんな轟に私は慌てて飛び起き、部屋を出た。
「……な、なんてことなの……?」
「織姫さま、そちらは水浸しにございます。どうかこちらへ!」
そう言って女中は私を広間へと連れていこうとするけれど、私は呆然と立ち尽くしていた。
縁側から見える外の景色、そこにはバケツをひっくり返したような大雨が窓の外の景色を塗りつぶしていた。
「こんな雨では、彦星さまは来れないじゃない」
「大丈夫にございます、姫さま。これは洗車雨でございます。彦星さまが明日姫さまに会う為の準備雨にございますゆえ……」
「この雨が? こんなに酷い雨が?」
「左様でございます」
七夕の前日、彦星さまが牛車を洗うため、雨が降る。それを洗車雨という事は私だって知っている。
けれど……これは違うでしょう? そもそも牛車を洗うのに、こんなにも雨が降るものではないわ。
縁側は水浸しで、今も女中達が床を拭いて、縁側に戸を立てている。これが洗車雨ですって?
「……彦星さまはきっと、今年も私に会う気がないのだわ」
「姫様……そのような事はございませんよ」
「いいえ、あるわ」
私は女中をその場に残し、足早に棚機部屋へと向かう。
後ろからついて来ようとする女中には去るよう言い放ち、私はひとり部屋の中に閉じこもった。