「休日まで大変ですね。外勤、頑張ってくださいね!夜ご飯、作って待ってます」

最後の台詞は恥ずかしかったけど、言い切った。
健気な妻を演出するのだ。
妻が待っている家って良いものでしょ、ふふん。なんて下心はもちろん、ある。

しかし無情にも返って来た言葉は、

「夕飯は要らない」
「ええぇっ」

びっくりして思ったよりショックを受けた叫び声が、気付いたら口から零れていた。
い、いけないいけない。
もっと余裕のある雰囲気じゃないと重い妻になってしまう。

「じゃあ、どこかで食べて来られるんですね」

無理やり納得したようにそう言って頷くも、「いや」とこれまた無情に応える声。

「夕方には帰って来るが、俺には構わなくていい」

「そ、そうですか……」

なんだか突き放されたようで、私はがっくり肩を落とす。

せっかくの休日だ。
お互いまだ何も知らない。仲を深められるようにどこかに出掛けられたらという願望は外勤という一言によって儚く散った。せめて一緒に夕飯を食べようという試みも何故か突き放されてしまった。

なんとなくモヤモヤを抱えたまま、私はおやすみなさいを言って自分の部屋に帰る。

今日の夕食は頑張って作った。
高野も喜んでくれた……と、思う。いや、思いたい。
でも明日の夕食がいらないのは、私の料理がやっぱり下手だったからなのだろうか。

ウジウジとしながら、眠りについた。
明日は高野のために、朝ごはんは用意しようと思いながら。