昨日の夜、高野は当直のためいなかったが、実は鍵を借りて勝手に部屋にあがって荷物を置いた上、新しく高野に買ってもらったベッドで既に一晩寝ている。


ので、部屋の作りもだいたい把握していたが、やはりその家の主である高野と一緒に部屋に入るとなると、なんだか恋人の家に初めてお邪魔するようなソワソワ感がある……ような気がする。


そんなわけで、カードキーをピッとしている高野を横目で見ながらこっそりドキドキしているわけで。


ドアを押さえてこちらが入るのを待っている高野にペコリと頭を下げて、「お邪魔します」と部屋に入った。


「もう君の家でもあるから、そう畏るな」


「それはそうなんですけど昨日の今日じゃまだ慣れないです」


「そうか。……じゃあ昨日はよく眠れなかったか?」


「いえ、当直室の簡易二段ベッドでもぐっすりな私がシモンズベッドで眠れないわけないです」


「それなら結構」


ふっと頰を緩めた横顔が、彼の家にいることも相まってか本当にプライベートな表情に見えてしまって、思わず顔をそらす。


落ち着かない。


そもそも、大学のときに付き合っていた彼氏とだって同棲したりしなかったのだから、他人と同じ家で暮らすなんてこと、想像も出来ないのだ。