やっ、ばい。 俺と彼女の視線が、初めて重なった。 ドクン、ドクンと自分の心臓の鼓動が早く鳴っているのが、わかる。 俺は、ゆっくりと深呼吸をしてからパスケースを彼女に差し出す。 「これ、電車に落としてたから」 「わっ、ありがとう、ございますっ」 彼女は、どこか驚きながらもニコリと優しく微笑み、俺からパスケースを受け取った。 「じゃあ、失礼、しますね」 ペコリと俺に頭を下げて、また歩みだそうとする彼女。