「あ、美咲。どこ行くんだ?」



私に馴れ馴れしく話しかけてきたのは、クラスメイトで友達の、横井 朔弥(よこい さくや)。



一応、私の男友達だ。



「横井くん。ちょっと図書室に用事があるの」



おしとやかな笑顔を貼り付けて、朔弥にそう言う。



「...今、周りに誰もいねーけど...普通にすれば?」



「あら、別にこのままでもいいじゃない」



「猫被りモードの美咲、まじ不気味なんだけど」



小さい声で朔弥がそう言ってくる。



...不気味...ねぇ。



「...余計なお世話よ」



「ほら、こっちの方が違和感ない」



そう言って、朔弥は面白そうに笑った。



そう。ご察しの通り、私は猫を被っている。



このことが朔弥にばれたのは、一ヶ月くらい前。



それまでは他の人と同じように猫を被って接してたんだけど...まあ、色々あって、本性がばれてしまった。