気づいたら何故かさっきの人がうちのお風呂に入っている。

一人暮らしで彼氏もあげたことないのに…いや、今はフリーなんだけどさ。良いんだけど。


何故か、といえば自分から言ったのだけど。

訳ありっぽかったし、寂し気な姿が、今にも消えてしまいそうで。

ほっておけなくて。

「よくわかりませんがとりあえずうち近いので、良かったら…」というとコクン、と頷いたから。

なんだかわたしが美人さんをお持ち帰りしたみたいでいたたまれない。

やましい気持ちはない。決してない。

自分に言い聞かせつつ、台所に立つ。

おなかが空いているようだったし、お風呂に入ってる間に何か作ろうと冷蔵庫を開けると卵に玉ねぎ、鶏肉、ケチャップ。

あ、残りご飯もある。オムライスにしよう。

高校から一人暮らしをして、2年。もう自炊も慣れたもので。

ぱぱっと作り、テーブルにサラダとオムライス、昨日の残りのスープ、お茶を並べて。

うん、自分で言うのもなんだけど、いい感じ。


丁度出来た時にガチャリ。とお風呂のドアが開いて。

「あ、あったまりましたか…ってうぇええ!」


てっきり、わたしが貸したスウェットで出てくるかと思っていたのに。

下だけスウェットを着て上半身裸で出てくるなんて想定外。

真っ黒な髪に生える白い肌。引き締まった体。

うわぁぁ神々しい。直視できない。

「なななななんで裸なんですかぁ!スウェットは!」

渡したでしょ!と言ったら、「…だって、暑い。」とか言い出す!もう!!今日ちょっと肌寒かったから長袖にしたのに!

ぱっと大きめの半袖Tシャツを渡すと無言で見つめて、ゆっくりもそもそと着替え出す彼。

ほんとにもう!マイペースというか、なんというか…!!

「…これ、食べていいの?」

彼が指差す先にはできたてのオムライス。

「あ、はい。どうぞ…お口に合うかわかりませんが。」

かたん、と一緒に席に着くと「…いただきます。」と行儀よく手を合わせる彼。

ひとくち食べるところじ、っと見つめる。

味見はしたけど、大丈夫だろうか…

食べて一口ゆっくりと飲み込むと、ふ、と顔が綻んで、「…美味しい。」と優しく笑う彼。

初めて見る彼の笑顔の破壊力に顔がまた真っ赤になったのは言うまでもない。


美人過ぎ。完全に負けてる。