リビングに入ると、厳しそうなお父さん。

…………………ちょっと怖いかも。

お父さんの横にお母さんが座り、向かいに勧められた席に座ると

隣に座った唯ちゃんを、チラリと見て

……………………睨まれた。

これは………溺愛してる???

緊張の冷や汗を流しながら

「私、タンポポ幼稚園で唯さんと一緒に仕事しています……森 悠人です。
この春より、お付き合いさせていただいてます。
今日は、私のためにお時間を取っていただき……ありがとうございます。」

深々と頭を下げると

「唯の父親です。
お付き合いしていることも、知らなかったものですから………
今日のことは、びっくりしました。
この子に彼氏がいるとは……………」

お父さんの言葉に

「だって、いつもいないから話せなかったんだもん。」って。

たしかにそうだけど………今は、お父さんを刺激しないでくれよ!と願う。

困った顔のお父さんに

「あっ!お茶を入れてくるね!
先生、お茶とコーヒー……どっちが良い?
お母さん、ケーキも出すよ?」って立ち上がった。

えっ!今、ケーキ??

この場に唯ちゃんがいない不安を感じていたら。

コーヒーとお茶を、オレだけに聞いたからか…………

再びお父さんに睨まれた。

「唯は座っていなさい。お母さんが用意するから。」と言って

立ち上がったお母さん。

フゥ~。

お父さんと二人にされたら………生きてないって~。

かなり脱線してしまったが………居ずまいを正すと……

ギョッ!と目を丸くするお父さん。

「あらあら。」と笑いながら、ポケットからハンカチを出すお母さん。

「だって……家族なんだもん。」とハラハラ涙をこぼす彼女は

本当に綺麗で……幸せそうだった。

…………そう!オレがここに来たのは……

交際を反対されて泣かせるのでも、二人の将来を約束するためでもない。

ただ…………唯ちゃんの笑顔を守るため。

ここで踏ん張って、ご両親に理解してもらわないと。

新たな決心を胸に…………