「先生、お父さんが帰って来たよ。」

唯ちゃんの電話が5時過ぎにきた。

今日は、唯ちゃんのご両親に逢って

『唯ちゃんをオレに預けて下さい』とお願いする。

大切な娘………特に素直で純真な、男の影すらなかった女の子が

10も年上のオジサンを連れて来たら……………。

びっくりするより……怒りを覚えるよなぁ~

夏休みで良かったよ。

顔を腫らして、仕事には行けないから。

あれこれ考えながら、昨日相談したお土産を持って家を出た。

オレの計画を知らない唯ちゃんは

「お父さん、今帰ったんだけど……シャワー浴びるって…。
『お嬢さんを下さい』っていう訳じゃないんだよ!って言ったのに。
変でしょう??」って…。

オレだって、今浴びてたんだよ。

のんびり唯ちゃんに、肩の力を抜いてもらって

いざ、お家に!!

「私、幼稚園で一緒にお仕事させてもらってます……森 悠人です。
今日は………」とオレが挨拶を始めると

唯ちゃんよりも、尋ちゃんに似ている綺麗な(唯ちゃんは可愛いよ。)女の人が

「いつも唯がお世話になってます。
主人が待ってますから、挨拶は後で………。
どうぞ、上がって下さい。」と優しそうな笑顔で話しかけられた。

「あっ、はい。お邪魔します!
あの……これ……つまらない物ですが……………。」

昨日聞いて、朝イチで並んで買った………有名な栗羊羮。

「まぁ!!わざわざ並んで………。ありがとうございます。
主人の大好物なんですよ。唯に聞きました??」

お母さんの言葉にホッとする。

お父さん…………好きだったんだぁ~。良かったぁ。

「お父さん、甘いもの食べるんだぁ!」

お父さんの好きな食べ物を知らない唯ちゃんに

昨日、相談しないで正解だった。

「先生、どうぞ。」

朝からお母さんと掃除や買い物をしていた唯ちゃんは

すっかり娘の顔をして、本当に嬉しそうだ。

この笑顔が続くよう…………頑張ろう!!