「明日こそは、植物園に行こう。朝10時に迎えに来るからね。」

お客さんのことは気になるけど……もう少し一緒にいたい。

二人の心が……帰る気持ちにブレーキをかけて、中々降りれない。

何度目かの『また明日。』を呟いて、シートベルトに手をかけた時……

玄関のドアがスッと開いた。

視線の先には………唯ちゃんのお父さん。

ドキッとしたが…………

この状況なら………挨拶しないとひんしゅくものだ。

思わず生唾を飲み込んで……

降りようとオレもシートベルトに手をかけた時……

お父さんの後ろから……肩を抱かれて………若い女の人が出てきた。

一瞬、理解出来なかったのか………降りかけた唯ちゃん。

思わず『マズイ!!』と判断して………

手を引いて座り直させた。

オレ達が見ていることを知らないお父さんは………

笑顔で会話しながら………女の人を助手席にのせ……発車した。

その様子を…………

ただ、呆然と見つめる唯ちゃん。

泣き虫唯は………

泣くことも忘れて……………

走り去った道路を……眺めていた。

心の何処かに………『浮気』の文字は……浮かんでいたはずだ。

この年まで………それに気づかない程……子供ではいられなかっただろう。

それでも…………信じて今日までこれたのは………

その影を見なかったから。

誰より家族を思い………

誰より大切にしてきた唯ちゃんを思うと…………

今、声をかけることができない。