『お~い、可愛い悠人く~ん。おはようさん!』

朝っぱらから兄貴の電話でウンザリしていたオレに、更なる難題をもってきた。

『悠、今日車貸して!』

ええっ~!!

強引な美香の頼み事は…………『お願い』という名の強制。

甥の大樹が保育園の参観日で家族総出で見に行くらしい。

「バスで行けばいいじゃん……………。」

一応の反抗をしてみるも………

「なにか言った?」の一言に黙ってしまう。

せっかく今日は、唯ちゃんと植物園に行くはずだったのに………

ブツブツいうオレの言葉を聞き逃さなかった兄貴に

この後悩まされてしまうが………




「ごめんね、唯ちゃん…………。」

申し訳なく思うオレに反して、とってもご機嫌のお嬢ちゃん。

「先生!ご飯作っても良いの?!」

「ケーキ買って行くね。」

男の人を怖がる唯ちゃんに

"オレと二人っきりになるのは?"と思い、避けていたオレの家。

休日は出掛けてばかりいたのに………オレの家に来たかったなんて。

彼女は本当に謎が多い女の子だよなぁ~

「先生って、本当にご飯作らないんですね。」

彼女は嬉しそうにご飯を作って、洗い物をしてくれる。

この生活がいつか毎日になればいいのにと………思わずにはいられない。

「唯ちゃん、来週は買い物に行こうか?
この家で使うカップやお箸、お揃いの食器を買って来よう!」

「えっ!いいの?!ここに?!」

この時オレは………

唯ちゃんがここに食器を置くことの本当の喜びは分かっていなかった。

オレの一言は……彼女の居場所を作ってあげる1つになっていた。