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今日で、放送部は本当の本当に引退。
「藤山くん、ありがとう。
急にお願いしたのにごめんね」
閉会式は、本当は藤山くんがアナウンスする予定だった。
なのに、私が無理を言って代わってもらったんだ。
晴斗と向き合って、臆病な自分を変えようと思えたから。
「いいんですよ。
前にも言いましたけど、僕が先輩の放送を聞きたかったんです」
藤山くんは笑顔だった。
「ううん。ありがとう。
今までの放送で一番楽しかった」
緊張はもちろんしたけど、自分の声が風に乗って響いていく感覚はとても気持ちよかった。
「よかったです。……あ、コードこっちです」
「はい、ありがと…」
私が巻いたコードを藤山くんに手渡した瞬間。
ぐいっと後ろに手首を引っ張られた。
「ひゃっ」
背中の方に倒れると思ったら、ふわっと抱きとめられる。
ビックリして首だけ後ろを向いた。
