マイクの設置された本部テントに目を向ける。 ああ、初めてだ。 マイクの前にいる橘を見るのは。 「校長先生のお話。校長先生、お願いします」 透明感があって、なおかつ少年ぽさのある声。 緊張からか若干上ずった読み方が、いつも楽しみに聞いていた橘の放送だ。 朝礼台に上がった校長先生を橘が横目で見る。 話す準備が整った様子の校長先生を見て、橘は原稿に向き合う。 「姿勢、礼」 その声を合図に、一同が動く。 マイクを通った橘の声はビリビリと体に響き、心地よかった。 一言一句聞き逃したくない。