溶けろよ、心




会場全体が、しんと静まりかえる。


黒い大きなスピーカーからジーーという音が聞こえ始め、マイクのスイッチが入ったのがわかった。




放送部員が、すうっと息を吸う。


「プログラム21番、閉会式」








「……っ」





え?



鳥肌が立った。





聞き覚えのある、たまらない声。






――カクンッ。



「うおっ」


自分でも驚くほど、体が勝手にぐらんと傾いた。

倒れるのは何とか踏みとどまる。




「おい、大丈夫か町田」


後ろの友人に心配される。

倒れかけた体を支えてくれた。



「ああ、悪い」


あぶねー。びっくりした。

腰が抜けるところだった。



胸に手を当てると、心臓がバクバクと脈打っているのがわかる。いつもより速い。




橘に振り回されてばかりの、俺の心。




志賀がどうとか、今は考えたくない。


俺はこの声に恋をした。

この気持ちは止められない。