「町田やべえ。抜くぞ!」
ゴール間際、ラインを越えるギリギリで、町田くんは2位を追い抜いた。
すごい、すごい、すごい!
グラウンド中がどっと湧いた。
野太い男子の「うおー!」という歓声の中に、黄色い声も混ざっている。
「きゃー!町田くん!」
「かっこいいー!」
その声を聞いて、私はなんだか変な気持ちになる。
モヤモヤする。
なんだったっけな、この気持ち。
わかりそうでわからない。
思い出せそうで思い出せない。
「真由、歓声すごいね」
「町田くんって、人気者……」
「モテるよー町田くんは。
今更気づいたの」
そうなんだ。
胸がズキズキする。すごく嫌。
「……私、行かなきゃ」
私は席を立って目的地まで駆け出す。
「ど、どこ行くの!?」
後ろからるいの声が聞こえて振り返る。
「るい、見てて!」
るいが「何を〜?」と言っているのが聞こえたけれど、私は気にしなかった。
