溶けろよ、心






ついに、町田くんが出場する最後のレース。


町田くんはその場で屈伸をしたり、ぴょんぴょんと垂直に飛んだりしてウォーミングアップをしている。


落ち着いた表情で首を回す。



すごくかっこいい……。



「町田くーんって呼んでみれば?」

るいが私を肩寄せて言った。


「何言ってんの、無理だよ!」


「え〜ケチ」


頬を膨らませて拗ねるるい。


「ケチって……」


その顔がかわいくて笑っていると、スターターの声がマイクに乗って聞こえてきた。



「位置について、よーい」


いよいよ始まる。

町田くんの後ろ姿を見つめた。


町田くんは口に手を添え、第一走者に声をかけている。



がんばれ、がんばれ。



パーンとピストルが鳴った。

第一走者がスタートダッシュを切る。




私は心の中で、ピンクのバトンを持った違うブロックの選手を応援していた。