溶けろよ、心



当たり前のように隣にいた頃とは、顔つきが全然違う。晴斗は、プロの顔をしていた。


「晴斗くーーん!」

晴斗を呼ぶファンに笑顔で手を振る。

晴斗、嬉しそう…。



「志賀!!志賀ぁ!!」

隣にいた町田くんが、周りのファンに負けない位の大声で叫ぶのが聞こえた。

顔を真っ赤にして、首の血管を浮き立たせて。


その姿で、私の心に張られた緊張の糸がプツンと切れた。



「晴斗!!」

私も一緒に叫ぶ。



お願い晴斗、こっちを向いて!
会いに来たの。
会いたかったよ。
もう一度あなたと、話がしたい!


私は強く念を送った。


その途端、車に乗り込む直前に晴斗はこちらに顔を向けた。