海へ向かう電車で彼と向き合いながら、

やっぱり男の人と会うってこういうことだよねードキドキもしない奴なんかと会っててもつまんないし。

「……ねぇ、夏季ちゃん?」

とか思ってたら急に声をかけられて、「はい?」と慌てて顔を上げた。

「……なんか、考えてた?」

訊かれて、「ああ、いえ!」と首を横に振る。

「ただ、こんなドキドキするのって、あいつとじゃ絶対ないなぁって」

買ったペットボトルのお茶を口にして呟くと、

「あいつって、浩平のこと?」

と、聞き返された。

「そうです」頷いて、

「浩平と会ってても、ドキッすらも全然ないし、いつもバカ話ばっかりで〜」

笑うと、

「……あのさ、」

と、不意に真剣にも見える顔で見つめられた。

「……もう、奴の話はいいから……」

ボソリと言われて、

「……えっ?」

と、声が漏れた。