「俺のこと知ってんの?」

「大変、失礼致しました! で、ですが何故、貴方様のような方がこのようなところに……」

「忍び込んでたんだ」

「しのび……えぇ!?」

 驚きを露わにする彼を眺めながら体を起こす。

 ふと肩口に温もりを感じ視線をやれば、ジャケットが掛けられていた。見慣れた色に慌てて傍を見上げる。そこに居たのは案の定フィンで、私は胸を撫で下ろした。

「レイニー様」

「フィン」

 先程まで彼が身に付けていたものなのだろう。柔らかな薫りが鼻孔を擽る。安心感を得たいが為に私は襟をかき寄せた。