「んで部屋に行ってどうするんだ? 撲殺?」

「殺してどうするのよ。襲われかけたところを、ヴィンセント様に助けていただきたいの」

「そんなことでいいのか?」

「ええ、必要なのは彼より地位の高い〝目撃者〟。王子は最適だと思わない?」

「そんなことで上手くいくかな」

「上手くいかせるのよ。その後は私とホールで踊って貰うから覚悟しておきなさい」

「ええ!? 俺、ダンスは……」

「苦手なフリでしょ?」

「よくご存じで……」

「それでも構わないわ。欲しいのは既成事実。私と貴方が一緒にいても不審がられない理由だもの。周りに邂逅を見せつけられれば、それでいいのよ」

「分かった。その後は通い妻か。悪くない」









 つまり今回の作戦はガストン様を怒らせることにある。

 猫を被らなくていいとあらば独壇場だ。プライドの高い者同士、沸点は分かり切っている。