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 ――プライドを傷つける?

 バーボンを舐めながらヴィンセント様は胡乱な声で問う。私は同じように甘いカクテルを傾け首肯した。

「ガストン様はプライドの高いお方よ」

「貴族は大抵そうだな」

「黙って聞いてちょうだい。ガストン様は夜会の度に私を部屋へ招こうとするの。そこを利用するのよ」

「下心見え見えでキモイな」

 今にも吐きそうと言わんばかりに顔を歪める彼の手は、バーボンの瓶を掲げている。高い位置から注がれるそれは氷を押しのけ、グラスと共に音色を奏でた。