「民といても怪しまれないだろう? 炊き出しの際、隠れて情報交換も出来る。いい案だ」

「ですが貴族がそれをするものでしょうか?」

「貴族だからさ。男漁りにも飽きて、豪華なものにも飽きた。物珍しいものに目覚めてもおかしくはない。〝変な人〟とは言われるだろうがな。
 それでも慈善活動は、その家の功績になり爵位を得られるくらいのものだ。悪女が、そうなったところで不思議には思わないだろう」

「成る程」

「それで、お前は何がそんなに気に入らないんだ?」

「気に入らないことなどございません」

「エレアノーラを毛嫌いしているように見えたが?」

「誤解です」

「お前の考えを言え。命令だ」