あっさりベルナールを落とした彼女。彼が〝面白い〟と感じるほどに彼女が魅力的であったことに胸がざわついた。
 美しさは人を惑わす。もしかしたら彼も男として魅了されただけなのかもしれない。

 何より落ち着かなかったのは、彼女の双眸が真っ直ぐ王子を見据えていたこと。熱の籠った視線は、まさに焦がれる乙女だった。

 あの瞳に見つめられたい。視線を絡めたい。そう思った。

 けれど叶わない願いだとも分かっていた。

 俺は彼女の護衛係で、彼女の前に立って敵を薙ぎ払うか、戦場に赴く背を守っていくしかないのだ。

「フィン。頼んだよ」

 ベルナールがグラスを揺らす。カラン、コロンと音を立てる氷塊は大分小さくなっていた。

「これからが大変だな」

「お前達の連携が大切だ。頼んだよ。雛烏達」

 俺達が首肯すると同時に、ベルナールは残りを飲み干す。グラスを置いた際、コトンッと奏でた音色は始まりの鐘のようだった。

「皆、紹介するよ。彼女は新しい協力者だ。可愛いお嬢さんだと馬鹿にするんじゃないよ?」