*

「はっ……!? ハア……ハア……な、に? なんなんですの……!?」

 生々しい夢に吐き気が込み上げる。慌てて腹部に視線を落とせば、そこには何も無かった。

「違う……夢、なんかじゃないわ……」

 顔の容を確かめるように幾度となく触れ、四肢を確かめる。私は自らを落ち着かせるように二の腕を摩り、頭を整理しようとした。

 しかし視界で揺れる色素の薄い髪に目を瞠る。慌てて、それを手に取れば、緑の黒髪は木漏れ日に輝く淡色に変化していた。そればかりか緩やかに波打っている。

 理解を示さない脳漿に情報を叩きつける為、鏡台へ駆け出す。鏡を覗くと見覚えのない美女が映っていた。

 栗蒸色の長い髪。千草色の瞳。釣った目尻が気性の荒さを表しているようだ。白皙はそのままだが、身体つきは少しばかり幼い気がした。

 深呼吸をし、鏡の中の自分を真っ直ぐ見つめる。視界の先では十二歳程の愛らしい少女が険しい顔をしていた。笑いかければ笑い返される。その様に、ああ現実なのだ。と実感した。