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「お邪魔するよぉ?」

「ヴェーン侯爵様、こんな廃れた酒場に如何様です?」

「お前の顔を見ておこうと思ってね。ほら、お前が好きなマリーも連れて来たよ~」

「揶揄わないでください」

「そうですよ旦那様。今日は大切な日なんですから」

 ヴェーン侯爵様はマリーと共に入店すると、俺の向かいに腰掛ける。マリーは、そそくさとカウンターに向かい勝手に紅茶を準備し始めた。