「それをしたら〝一夜の思い出〟なんかにはさせないよ。俺は透き通った君が好きだから」

「……よろこんで、です」

 一時、唇を離して鼻先で囁く。俺達の間に愛を確かめ合う言葉などなかった。

 そのまま娼館の寝台に寝転び閨事に耽る。声を押し殺す彼女の口唇を塞ぎ、音を立てぬように只管貪った。

 香油の匂いが鼻を突く。褥には他の男の気配がしたけれども、気にならなかった。彼女が、それほど俺を夢中にしてくれたから。



 俺達は、そうして「いつか一緒になりたいね」と睦言を交わし合った。