彼は俺にとって一種の親だった。けれども〝もしも〟の場合は、親を子が殺すのだと義務付けられている。

 きっとココでも計られているのだろう。〝国への信頼〟を。

 慟哭しなが彼の心臓へナイフを突き立てる。刃ごと俺を抱きしめるように受け入れた彼が力尽き、銀花散る谷底へ舞っていくのを俺は一人で見ていた。

 とても、とても寒い雪国での出来事だ。凍える身体。凍てつく心。そこで俺は極点の氷で仮面を作った。



 〝笑み〟というペルソナを。