決戦のあの日、鼓膜を震わせた声が耳にこびり付いて離れない。あんなに思い出したくて、思い出せなかった声が俺の罪をも蒸し返す。

 痛む心に身を委ね、杯を仰げば店のベルが鳴った。

「ちょっと、昼間から飲んだくれないでよね。おじさん」

「すっかり口の悪い美女になっちゃって」

 唇を尖らせて抗議すれば、腰までの長い髪を揺らしたロビンが傍を通り過ぎる。

 買い物の証である紙袋をカウンターに置いた彼女はクルリと身を翻し、足早に此方へ向かってきた。俺の目の前に立ったかと思えば、酒瓶を持ち上げラベルを確認する。

「コレ、高いやつ」

「げ、バレた」

「酒瓶(コレ)で殴っていい?」

「それは死ぬ! さすがの俺でも死ぬからね⁉︎」

 相変わらず、冗談か本気か分からない奴だ。エレアノーラ嬢にも負けない美貌をひけらかした彼女は、眉一つ動かさず俺の目をジッと見据えてくる。