「〝傀儡〟とレイニーが言った」

「はい?」

「酒場で初めて会った時、レイニーは俺に〝傀儡〟になれと言ったんだ」

「何を仰りたいのです?」

「確信はない。だが国政を裏から操っていたのは〝ヴェーン家〟だったんじゃないかと思ってね」

「王は傀儡にされていただけだと?」

「ああ。だから思ったんだ。レジスタンスのことも、俺の優秀さも、レイニーの行動も、全て彼の計画の上だったのかもしれない、と」

「……さすがに考えすぎかと」

「そうかもな……そこで一つ提案がある。ユアン――」

 空が遠い。彼の言葉も遠くて、僕は思わず耳を疑った。

「今一度、宜しいですか?」

「帰ってこいと言ったんだ。俺の護衛係は、お前じゃないと務まらない。
 レイニーにも官職を与えよう。彼女がいれば国も晴れる」