「ヴィンス様が言っていたことは当たっていたんです。ヴァイオリンが奏でたラブソングには背筋が凍りましたよ」

「じゃあなんで俺に告白させた? 嗤っていたのか?」

「いいえ。任せるのなら貴方が良かっただけです。僕がヴィンス様に勝てるわけがないじゃないですか」

「嫌な奴だ」

 唇をへの字に曲げ不満を呈す彼。それに眉尻を下げていれば、和やかな空気が流れた。

 王として一息吐いた彼は黒い睡蓮を各地に卸しながら、僕達を探す旅をしていたらしい。

 僕達を繋いだ花は偉大だ。例え命が枯れ、朽ち果てたとしても、誰かの心に永遠に在り続けるから。

 それが花開いた証になり、命を零した種子が、また次の年に色付く。

 命の連鎖とは美しいものだ。記憶という証は尊い。