再会は二度とないものと思っていた。だから見慣れた背中を追い掛けながら僕は自らを蔑んだ。



 ありえないよ。

 マボロシだ。

 また追い付けないものを追い掛けるのか。



 けれど僕を振り仰いだ瞳は優しくて、触れた温もりは温かかった。幾度、亡霊を追い掛けたことか。僕の半生は、それに尽きる。

 お互いが「よかった」と零した一言は何よりの喜びで、重なった声は本物だった。

 全ては失敗に終わっていたものと思っていたのに、人生とは何があるか分からない。まさかヴェーン侯爵様が味方だとは思わなかった。