「黒の睡蓮を開発するのに何年もかかった。これはサインだったんだ。もう一度会いたいってね」

「まるでシュプギーじゃない」

「そうだな」

「……ねぇ、青い薔薇の花言葉をご存知?」

 頭を振る面々の中に笑みを浮かべるユアンがいる。彼が知らないわけがないな、と笑みを返せば、先を促された。

「昔はね〝不可能〟だったのよ。でも栽培できるようになってからは〝奇跡〟という言葉が追加された。……ヴァサーリーリエもそうなるといいわね」

 黒闇は晴れた。前世の縁は手繰り寄せた。

 もしも赤い糸が解れてしまったのなら結び直そう。もしも絡んでしまったのなら解こう。

 一本の糸の先に在るのが変えられない花ならば、それはきっと運命だから。

 生きていて良かった。生かしてくれて良かった。愛されて愛して、やっと〝私〟になれた気がする。

 九九九本の薔薇より、一本の花を。愛する人が贈ってくれるのなら、そっちの方がずっと愛しい。