「リーリエ、今日は旦那と一緒じゃないのかい?」

「先に見に来ただけよ」

 私達は亡命に成功し、今では小さな花屋を営んでいる。私とユアンは治まるところに治まり、今では夫婦だ。

 身分も何もない私達の関係は居心地が良く、慈しんでくれる彼の手を手離すことはないだろう。

 市場に買い付けに行くだけなのに、毎度、毎度付いてくる彼に苦笑を浮かべるのが日課だ。

「なにか新しい花あるかしら?」

「今日はね。レジフォルニアから届いてるんだよ」

 懐かしい名前に心が沈む。大切な人達が亡くなった事実は、辛いという言葉では括りきれなかった。