「ヴィンス様にお願いされましたの。もしも失敗したらエレアノーラ様を私の国で受け入れて欲しいって」

「どういうことなの……?」

「数日前、母国に帰るように言われましたわ。でも私は最後までヴィンス様の妻で在りたいから、と逃げるように促す彼の提案を突っぱねてやりましたの。
 だから彼が用意した帰国用のものを貴女に差し上げます」

「どうしてそんなことを……私、貴女に酷いことしか言ってないのに……それなのに……」

「あら? 私、タダで差し上げるだなんて言ってなくてよ」

 不敵に笑む彼女が薄紫の髪を揺らす。その間も断末魔と銃弾の音が飛び交っていた。