「レイニー様、戦とはこういうものです。悼むのは終わりを告げてからにしましょう」

「ええ」

「俺もいつ死ぬか分かりません。なので護衛の戯言として受け流してください」

「珍しく弱気なのね」

「レイニー様も弱ってるじゃないですか。でもそこも好きですよ」

 声が出なかった。心臓が騒いでいるのはもとからだ。なのに彼の言葉に揺さぶられたような気がして、私は言葉を失った。

「女性として好きでした。アンタに誓いを立てた日からずっと。お慕いしておりました」

「なんで、こんな時に……」

「俺は許してもらえないと思うんです。きっとアンタに許してもらえない。
 だから一生覚えていてもらえるように、今言いました」

「フィンレイ着きました。貴方は此処までで構いません。あとは私が旦那様のもとにお連れしますから」

 豪華に装飾された観音扉の前で彼女は立ち止まる。騒がしい他の場と違い、喧騒の薄れた廊下は不気味だった。